利上げ鈍化もFRBタカ派姿勢で期待低く市場は安定推移

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FRBは再び、タカ派姿勢

本日もFRBによるタカ派発言の繰り返しは、市場の楽観ムードの勢いをそいでいます。

インフレ減速によって利上げを鈍化するという市場の期待もFRBが払拭しているため、可能性が低くなりました。

米インフレは今のところ減速しているとの見解が強いですが、FRBの金利引締め策を緩和する方針は弱くみえます。

金融緩和につながるインフレ減速のニュースが流れるたびに、FRBはその楽観的な観測に水を差そうとしています。

市場は先週のCPI発表のあと、金融緩和の期待から株価の上昇と国債利回りの低下につながりました。

FRBの発言として、セントルイス連銀ブラード総裁がインフレ抑制のためには、最悪のシナリオとして金利が7%まで、最低水準でも5%から5.25%は上がる必要があると述べたことは大きな影響を与えました。


一昨日の米小売売上高の予想を上回る好調な結果と昨日の堅調な失業保険申請件数の増加によって、米経済は未だ沈静化していないとのFRBの見解を裏付ける格好となりましたが、市場は捉え方は違うようです。

S&P500の好調で株式市場が再上昇

現在のインフレ抑制の動き、低い雇用市場および不十分な金利引締め策であるにもかかわらず、投資家は未だに期待が高いように見受けられます。

FRBのタカ派発言で、米国債利回りの低下にストップがかかりましたが、米10年債利回りはCPIデータ前の水準を大幅に下回っているのが現状です。

その一方、株式市場は若干の下落に転じたものの、米株式市場は依然として上昇中です。

メイシーズとシスコシステムズがともに収益予測を上方修正したので、S&P500は昨日大きく上昇にしました。

結果、マイナスで終値をつけたとはいえ、欧州株式市場が主導となり、今日は今週の損失を補填する可能性が十分にあるようです。

欧州では、ECBが12月に0.75%から0.5%の利上げになる可能性が高く、市場の期待が高まりつつあります。

しかしながら、欧州の各銀行はおよそ5,000億ユーロのTLTRO(Targeted Longer-Term Refinancing Operations:貸出条件付きの流動性供給オペ)を返済する必要があ流ので、なお慎重な姿勢は変えられないでしょう。

英財政再建計画発表後にポンドは堅調に推移

今日のユーロは上昇をみせたものの、方向性に欠けました。

ポンドは、米ドルに対して1.19ドル台を越え、今週は上昇して終える見通しが強まっています。

昨日、ハント英財務相が財政再建計画を発表し、英国はすでにリセッション入りしているとの見解を示唆したことで、ポンドドルは一時1.18ドル台を割り込むことになりました。

財政再建計画では、歳出削減が国政選挙までずれ込んだことで、低所得者への負担が予想よりも軽減された格好です。

その一方、税負担は第二次世界大戦後で最高水準となり、経済成長への具体的な方針はいまだ見られていないのが現状です。

国債市場の混乱はなく、今日の英10月小売売上高の予想外の強い結果のおかげで、ポンドは回復しました。

円の反応はCPI上昇でも限定的

10月消費者物価指数が上昇したにもかかわらず、円は米ドルに対して再び下落し、今週は下落して終えると推測されています。

生鮮食品を除くコア消費者物価指数は、前年同月比3.6%増となり、先月結果の3.0%から上昇しました。

上昇率は40年ぶりの高水準となったものの、日銀はインフレは翌年から下落するとの見方を示唆しているので、材料視にされませんでした。

今日、日銀の黒田総裁は急速な物価上昇にならない限り、現行政策をキープする姿勢を示し、ドル円は140円台越えを再び試す方向性となっています。

今のところ、FRBタカ派発言は一旦落ち着いたものの、米ドルは今なお不安定な動きです。

しかし、円とスイスフランの下落で、米ドルインデックスは上昇して今週を終えると予測されています。