各国の債券利回り上昇で株価に圧力
今年の取引も残りわずかとなり、市場は不安定です。
特に重要な指標発表もないので、株式市場と為替市場の両方ともに方向性に欠け、債券市場に注目が集まっています。
今年最後のFRB会合がタカ派姿勢で終わったため、市場の切迫したFRBハト派転換への期待が薄れた格好です。
インフレ圧力の後退と主要経済の減速のなか、来年の金利見通しは不鮮明です。
FRBの金利政策引締めが緩和へと向かう明らかなシグナルを市場は待ち望んでいましたが、FRBはターミナルレートを5%強として、ECBも引締めサイクルの途中経過の途中であると明言したことで、年末に向けて市場のムードはより悪化している状況です。
注目すべき点では、12月のFRB会合以降は各国の国債利回りが上昇しており、2か月前からの下落にピリオドを打ったことでしょう。
米10年債利回りは、6週間ぶりの高値で3.80%を上回っています。
今日のアジアセッションは、豪10年債利回りとNZ10年債利回り共に、0.1%以上も上昇し、独2年債利回りは2008年以来の高水準を更新している状況です。
ナスダック利回り上昇&テスラ株価下落
金利の変動に敏感であるハイテク株は、長期借入コスト上昇の圧力を受けているように見受けられます。
利回りが急上昇したことにより、将来の予想キャッシュフローが割り引かれるため、成長株とハイテク株はバリュエーションが圧迫されていると言えるでしょう。
ナスダック総合指数は、1.4%下落と昨日は最も下落しました。
S&P500が0.4%下落しましたが、ダウジョーンズは0.11%も上昇しました。
テスラ株価が11%以上下落したことを踏まえると、これらの変動は小幅と言えますが、ナスダックは今月の初旬と比較して10%近くも下落しており、年間で33%の損失で今年の終わりそうです。
テスラ株価の下落は、需要の低下と供給混乱への懸念が背景であり、来年に向けたハイテク株が直面するチャレンジを色濃く反映していルと言えるでしょう。
ロイターによれば、テスラが来年1月に中国での車両生産削減で、ディスカウントを実施する計画があり、また米国でも2つのモデルのディスカウントについても報道されています。
今日は広範な売りが緩和されているようですが、ロンドン株価市場は急上昇してヨーロッパ市場の取引では、米先物もほぼ横ばいの推移で終わりました。
為替市場では円安は横ばい
通貨市場は落ち着きを取り戻しつつあります。
米ドルは今も上昇していますが、勢いに欠けており多くの通貨ペアは横ばいで取引されている状況です。
ユーロは安定していますが、ECBメンバーであるノット蘭中銀総裁による来年の夏までに0.5%の金利引き上げを続ける可能性が高いとの発言で、ユーロの急上昇は阻まれた形です。
日銀が今月の会合でイールドカーブコントロール政策修正を重要視しなかったので、円は米ドルに対して134円を突破したのちに反発しました。
日銀会合の議事録で、理事会メンバーは景気刺激案の検討ではなく、イールドカーブコントロール政策修正が日本国債市場でうまく機能していないことを指摘しました。
しかし、物価上昇は拡大しており、2%のインフレ目標達成へ向けて進んでいるとの認識もあります。
来年の日銀の会合で、金利政策の更なるサプライズが用意される可能性もありますが、今のところは円がホリデー取引中も引き続いて苦戦するとの憶測で失望感も見受けられます。
原油価格復活は限定的
今日、原油と銅など他のコモディティは、堅調な米ドルの動きとゼロ・コロナ政策撤回に続く中国の需要回復への懸念が重くのしかかっている状況です。
中国では、コロナ感染者が今なお増加中であり、原油への力強い需要回復には数週間かかると市場はその見通しを再評価したことが理由で原油価格は下落しています。
今日はロシアが原油と石油製品の輸出制限を強化するとの見方が広まりました。
ロシア政府は、直接もしくは間接的問わずに、原油の価格上限を規定している国々への原油販売を禁止しました。
しかしながら、ロシア原油はすでに1バレル60ドル未満で販売されており、この禁止令が原油供給に与える影響は限定的であると言えるでしょう。
将来的には、原油先物はここ最近の上昇傾向を維持することは難しく、ゴールドの上昇もこれまでの勢いを失っています。
現段階では、より安定した米ドルと債券利回りの上昇のなか、ゴールドは1オンス1,800ドルのレベルを何とかキープしている状況です。