米賃金上昇の緩和によるFRB利上げ鈍化傾向高まり株価上昇

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米雇用統計発表による米経済減速を市場歓迎

先週の金曜日は米雇用統計の発表がありました。

この指標によって米経済の複雑な状況は鮮明化されましたが、市場はインフレ圧力の弱まりを確認し、全体的にポジティブな日となりました。

12月の民間雇用者数は予想以上に上昇した一方で、平均賃金は急速に減速しました。

12月の平均時給は前年比4.6%上昇と予想を大幅に下回り、2021年8月以来の鈍化で前月と比べても予想を下回りました。

11月の雇用者数も下方修正され、米雇用市場はさらに冷え込んでいるとの見解を強めています。

ISM非製造業PMIおよび工場受注はともに軟調な結果となり、市場にとっては良い結果となりました。

ISM調査によれば、米国のサービス部門は12月にやや縮小した結果、支払い価格指数は2021年の初め以来の最低値を更新することとなりました。

FRB利上げ鈍化は未だ不透明

この指標を受け、市場による2023年のFRB利上げ観測はおよそ75%が今年2月の0.25%利上げをサポートしていますが、米国債利回りは短・長期ともに下落しました。

金曜日の発表後、アトランタ連銀ボスティック総裁とカンザスシティ連銀ジョージ総裁はともに、今年少なくとも金利が5%に達すると主張しましたが、市場は米労働市場が以前の勢いを失いつつあるとの主張を疑う予兆を見逃したように見受けられます。

数か月にわたり、失業率と非農業部門雇用者数の推移に格差がありましたが、修正された家計調査では、そのギャップの責任は失業率にあるとしています。

米家計調査によると、雇用者数は12月に71万7千人増加し、10月と11月の合計損失を補填するに十分な数値となりました。

米失業率は現在数十年以来の低水準となる3.5%で、FRBが金利引締めを停止する根拠はないと言えます。

米株価復活の持続性

しかし、市場はインフレ減速に楽観ムードがまだあり、ハードランディング回避のためにFRBへ再考を促しています。

今週木曜日発表のCPIレポートは、市場にとって有利なものになる可能性があります。

12月のインフレ率は6.5%鈍化すると予想されており、先週末の米株価復活は序章に過ぎないのかもしれません。

S&P500先物は、先週末に2%も急騰したものの、現在は0.3%上昇で取引されています。

欧州株価とアジア株価ともに非農業部門雇用者数を発表を受けて反発しました。

中国人民銀行が家計および民間企業への支援強化を公約したこととゼロ・コロナ政策撤回による中国の旅行およびレジャー産業の大きな復活への期待もリスク選好を高める結果となりました。


今日、中国の需要の急速増加への期待から原油や銅といったコモディティーも2%から3%急増しています。

ゴールドも引き続き、11月初旬から続く上昇トレンドで1オンス1,875ドル前後まで上昇中です。

米経済が適切な状態に戻り、米国債利回りの押し上げへの期待を市場が享受したとするなら、ゴールドは1,900ドルを超える可能性が高く、時間の問題かもしれません。

米ドルは安値更新中

為替市場では、米ドルが他の主要通貨に対して7か月ぶりの安値を更新しました。

先週の金曜日に1か月ぶりの高値から一気に反転し、今日は米ドルは後退して今週のCPIデータが予想を下回るなら、米ドルはこれからさらに下落する可能性があると言えるでしょう。

そして、リスクに鋭敏なポンド、豪ドル、NZドルは、概ね上昇傾向にあります。

カナダドルは先週末の堅調なカナダ雇用報告があったものの、若干軟調な推移となっています。