予想を下回ったアメリカの消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の成長率により、アメリカでの追加利上げの期待は大幅に後退しました。CMEのFedWatchツールによる連邦公開市場委員会(FOMC)の6月13日と14日の金融政策予測では、政策金利の期待が99%以上の変化なしとなり、事実上現状の維持が織り込まれた状況です。
その後、ミシガン大学の消費者調査により、2011年以来の長期的なインフレ期待の上昇が示され、追加の利上げ期待が再燃しました。さらに、アメリカの小売売上高の好結果と組み合わせることで、利上げ期待は20%以上を回復しました。
こうした動向の中、注目が集まっているのがアメリカの個人消費支出デフレーター(PCEデフレーター)です。CPIと同様の指標でありながら、CPIよりも約2週間遅れて発表されるため、市場の注目度は低いですが、インフレのターゲットとなり、金融政策のトレンドに影響を与えるため、現在の環境下で増加した注目を集めています。
先月の3月のPCEデフレーターは、2月の年間成長率+5.0%から-4.2%に大幅に減速し、2021年5月以来の最低水準となりました。コアデフレーターも年間成長率+4.6%と、2022年12月以来の最低水準に達しました。市場予想は+4.1%と+4.5%でしたが、予想を下回ったことから成長の減速と解釈されます。
もし4月のPCEデフレーターがさらなる減速を示す場合、利上げ期待が後退する可能性があります。
4月のアメリカの消費者物価指数(CPI)はわずかな減速を示し、前年比+4.9%と3月の+5.0%と比較して増加率が下がりました。食品とエネルギーを除いたコアCPIも、3月の+5.5%から+5.4%に減速しました。詳細を分析すると、ガソリンスタンドの売上は年間比で-12.2%の減少を記録し、しかし、月次ベースでは+3.0%成長し、3月の-17.4%から減速率が大幅に緩和されました。食品価格も減速し、3月の前年比+8.5%から+7.7%の増加となり、食品価格の減速が8ヶ月連続で続いています。航空運賃は昨年2月以来の2桁の急増を経験し、9月と10月の前年比+42.9%というピークから、3月に-0.9%の減少を示し、2021年11月以来の初めてのマイナス成長となりました。また、住宅費用も3月の前年比+8.2%から+8.1%にわずかな減速を経験し、2年2ヶ月ぶりの住宅費用の減速です。これらの減速にもかかわらず、一部のセクターは依然として厳しい状況が続いており、例えば衣料品セクターは4ヶ月連続で増加し、自動車保険も昨年8月以来2桁の増加を記録し、前年比+15.5%という2021年5月以来の最高水準となっています。
現在の状況を考慮すると、4月のPCEデフレーターは、3月の+4.2%から+4.3%の年間成長率でわずかながらも強い成長を示すと予想されています。コアデフレーターの予測は+4.6%年間成長率で変わらず、3月と同じ水準です。
もしCPIと同様に成長が予想を下回る場合、それはドルへの売り圧力を生むことが予想されます。一方、もし成長が市場の予想を上回る場合、6月の利上げ期待が再び高まり、それによってドルが強まると予測されています。今月、私たちは価格以外の指標、例えば雇用統計や小売売上高などの強さを目にしてきました。そのため、もし成長が予想を上回る場合、大きなリスクが存在し、私たちはUSD/JPYの急速な上昇を目撃する可能性があります。