ECB利上げ決定も今後見送りを視野で市場ムード改善

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米大手11銀行の救済策で銀行危機は緩和

世界の株式市場は、先週金曜日にリリーフ・ラリーを仕掛けましたが、大きな損失で終わりました。

先週は変動が大きかったので投資家にとって試練となりましたが、規制当局が銀行危機を回避すべく対策を発表したので、市場の信頼感は回復している模様です。

先週のシリコンバレー銀行破綻の影響は、米地方銀行全体にまで波及し、次なる信用危機に直面しているのは、ファースト・リパブリック銀行です。

米政府による調整で、米大手11銀行はファースト・リパブリック銀行の資金繰りに300億ドルの投資で支援することになりました。

この救済計画発表後、ファースト・リパブリック銀行の株価は木曜日に更新した安値から一気に急騰しました。

ECBは大幅利上げ実施も今後利上げ停止を視野

昨日、欧州ではECBの政策発表があり、予想通り0.5%の利上げを決定しました。

銀行危機の影響によってECBが大幅利上げに踏み切るかについて、多くの憶測が飛び交いました。

ラガルド総裁はユーロ圏の銀行システムの信頼回復を示すことに尽力し、スイス国立銀行がクレディ・スイスを支援したことから、大幅利上げに踏み切ったと言えるでしょう。

しかしながら、ECBが先日の会合に伴って、将来の引き締めに対するガイダンスの発表を取りやめたことは非常に重要なポイントと言えます。

シリコンバレー銀行破綻前は、今後少なくても2回の0.5%利上げを示唆していましたが、今回、将来の政策については、完全にデータに依存すると発表しました。

その結果、次回5月の政策会合までに金融環境の改善が見られなかったとしたら、利上げ見送りも視野に入れている可能性があります。

テクノロジー株上昇で株価反発

銀行危機への欧米の政策対応によって昨日は市場のセンチメントも好転して、今日はリスク選好も回復している模様です。

欧州の株式指数は、米株式市場で上昇後に続伸している状況です。

米国株式の反発は米国債利回りの反発と並行しましたが、全ての債券利回りは金利に鋭敏なハイテク株に恩恵をもたらした3月初旬のピークを大幅に下回っている状況です。

金融株が世界中で大打撃を受けている状況の中、ナスダックは月曜日から5%以上も上昇しています。

金融システムに圧力がかかっている状況で、市場はディフェンス姿勢で通常のテクノロジー株に依存している可能性があります。

ビットコインについても、利回りの低迷から大きな恩恵を受けていると言えるでしょう。

トリプル・ウィッチング・デイと銀行の流動性に懸念

しかし、米先物は三つのデリバティブの決済日が重なる今日、警戒感を表してなのか、いくらか勢いを失っている状況です。

2.7兆ドルのオプションが今日で期限切れになると推定されています。

ストック・オプション、インデックス先物とインデックス・オプションの四半期ごとの契約が満了となるので、ボラティリティの変動を引き起こす可能性があります。

このトリプル・ウィッチング・デイと呼ばれる決済日が重なる今日、銀行を巡る金融危機によって、市場の混乱を招く可能性が高いと言えるでしょう。

市場に楽観的ムードが戻ってきたにもかかわらず、今週政府から多額の借り入れをした銀行への経営の健全性に対する懸念も残ります。

米国の銀行はFRBの貸し手であるリゾートファシリティと、シリコンバレー銀行破綻後に開始された銀行タームレンディング・プログラムをともに利用しています。

米利上げ停止観測で米ドル下落&ユーロの困難継続

ECBに続き、FRBも来週の利上げ後に利上げを一旦停止する見方が市場では広がっている状況です。

安全資産の需要が限定的となるなか、FRBが利上げの最終局面に近いとの観測が米ドルを押し下げてきています。

ユーロとスイスフランは、クレディ・スイス関連の懸念から若干回復しましたが、クレディ・スイスとUBSは強権的な統合案に反対姿勢を示しているので、問題解決への目途は未だ立っていない状況です。

それゆえ、伝統的な安全資産のゴールドの需要増加が継続して、今日のリスクオフムードにもかかわらず、ゴールドは上昇し続けています。